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かっしゃーんっとテツの背後のフェンスが鳴った。
振り返れば怒り顔のザジが、両の前足を振り上げてフェンスを叩いている。
「来いって言ってんのになんで来ねえんだ!」
「のろま!」「能天気!」と叫ぶザジの声を聞きながら、テツはもう一度お涼の方へ振りかえった。
「任せて」
はっきりと告げて決意を新たにした。
お涼は一瞬驚いた顔をする。それから少しだけ安堵したような笑みを浮かべて「任せたよ」と小さな声で小柄なトラ柄を見送った。
自分では力不足だろう。彼に助けなど必要ないだろう。テツは心からそう思っている。けれど彼の心配性のお母さんを安心させるために、もしその時が来たら力を尽くさなければとも思うのだ。
フェンスの向こうで騒ぐザジと呆れるシキの姿が見える。
「今行くよぅ」
テツは駆け出す。
さあ、調査の始まりだ。
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