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「……っあー! びっくり、した!」
くるくると1回転半宙返りをして、しっかと4本足を地面につけて着地することに成功した。
野生を捨て去っても猫の部分は捨てていなかったらしい。
『テツくん大丈夫!? ケガしてない?』
駆け寄ってきてテツを抱き上げたのは、長い髪の毛をおさげにした眼鏡の少女だ。少女に身体のいたるところを撫でられてながら、テツは抗議するようにうなあと鳴いた。
『ケガはしてないね。良かった』
「ちょっとご主人! 急に声をかけられたらびっくりするじゃないのさ!」
『テツくんご機嫌だねぇ。ご飯だってわかるのかな?』
「そんなナデナデなんかで誤魔化されないんだから……ああ、そこ、もうちょっと右……あふん」
共通の言葉を持たない1人と1匹の思惑は決して噛みあう事はないようだが、それでも良好な関係を築いているらしい。くったりと軟体動物のようになってしまったテツの身体を抱き上げたまま、少女は屋敷の縁側を目指して白いワンピースを翻した。
そこには2枚の餌皿と共に、別の猫が座布団の上に座って待っていた。
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