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夜遊び烏と戦う理由
3匹は廃墟群の裏手から伸びる遊歩道の端を、そろそろと1列に並んで歩いた。人通りも民家もないこの辺りは月明りくらいしか届く光がなく、暗闇の中にとっぷりと沈んでいる。
それでも猫には十分だ。
闇の中を6つの小さな目玉がぱちぱちと瞬く。
「ね、これからどこ行くの?」
無邪気に言うのは真ん中をてってこと歩くテツだ。
「とりあえず、死体のあった場所だ」
足音1つ立てないで歩くザジがぶっきらぼうに答え、
「じゃあ、商店街に行くのね」
ぺたぺたと最後尾を歩くシキが頷いた。
この町の商店街は廃墟群の裏手にある遊歩道をひたすら南に下ると見えてくる。
駅まで伸びる煉瓦で舗装された広い歩道の両脇に昔からある個人商店が立ち並んでいるのだが、夜では当然固いシャッターが下ろされている。明かりも人通りも殆どない商店街はひっそりとしていた。
「相変わらず、此処の匂いはごちゃごちゃしてて嫌いだ」
べえ、と嫌悪感を露わにザジは舌を出す。
人間社会に慣れているテツとシキは不思議そうに1度は首を傾げるものの、
「たしかに。ここは他の猫の匂いも多いから半兵衛の痕跡も辿りづらいかも」
と、シキの方は小さく頷いた。
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