二件目:厨房には貧乏な先輩。

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「コップの底に指を2本横に立てるだろ?」 「………はい」 「そんで、原液(げんえき)を2本目のところまで入れる」 「………はい」 「スコップ半分ぐらいの量の氷を入れて……」 「………はい」 「あとはここに炭酸水を入れる機械があるから、  レバーを引いて、そんでコップの(ふち)から指2本分を空けて(そそ)ぐ」 「………ほう」 「はいっ、これでレモンチューハイのできあがり」 「……なるほど」 「わかった?」 「はい、チューハイの作り方はわかりました。  だけどコウさん、コウさんって………  なんやかんやでしっかりとしてたんですね。  今日はギターも持ってませんし」 「んなっ!!?」  バイトも今日で五日目に突入し  今日はポンコツ可愛い先輩であるコウさんに、  チューハイの作り方を習っている最中です。  以外としっかりした教え方をする先輩に、思わずビックリしてしまった僕は  よくできましたと言わんばかりに先輩の頭を撫でてあげる。 「よしよ~し……」 「んなぁぁぁっ!!!?」  しまった。  あまりにもポンコツで可愛いが(ゆえ)に、先輩であるコウさんの頭を撫でてしまった。  僕は少し汗を(たらし)、ゆっくりと手を頭から離す。 「あ……、す……すみません」 「お……おお……おま……おお前ぇ~~……  こ……こここ…この野郎ぅ~~……」  あら、可愛い。  頭を撫でられた先輩は  顔を真っ赤にして制服のエプロンをギュッと掴んでいる。  以外と身長の高い先輩、160センチ(なか)ばぐらいか、  しかし、  180センチ後半あたりある身長の僕からすれば  先輩はまだまだ小さい女性なのである。  そんな先輩を僕は小さくて可愛いポンコツだなと  不覚にも思ってしまっていた。  さて、ポンカワ先輩の事で少し話は()れたが、先程一声(ひとこえ)かけたギターの件である。  そう、いつも肩からぶら下げているギターを  今日は持ち歩いていないからだ。
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