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 「すみません。よく分かりません。」  ふぅ。と溜息をつき自分を落ち着かせようとする。  「だから、今日の天気を教えてってば!」  今度は細かく説明してくれた。  「今日は傘が必要です。」  外を見ればそれは一目瞭然であった。新しい一日を告げる陽光は分厚い雲に覆われ、世界は夜とも朝ともつかない微妙な空の下でいつも通りに蠢いていた。そこそこ高いこのマンションの一室からは、血管のように張り巡らされた道路網を栄養を運ぶ血球のように忙しく走る車達を一望できた。その様子を眺めていると、やがて社会が一つの巨大な生命体のように思えてくる。そして自分はその極小さな一部分に過ぎないのだ。そんなメランコリーに浸りながら、今日も仕事へ向かわなくてはならない。この社会を成り立たせるために。人体だって赤血球が働かなくては成り立たない。コーヒーのいい香りが部屋に充満する。トースターから食パンを二枚取りだし簡易なさらに乗せる。コーヒーにはミルクと砂糖沢山入れる。ジャムをパンに塗って、コンビニで買ったベーコンとサラダをテーブルに並べる。窓を見られる位置にある椅子に腰掛けて手を合わせる。  「いただきます。」     
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