2、曇りのち雨

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私はコンビニで買ったおにぎりを一口食べたが、悲しい事にご飯が喉を通っても、美味しさが全く感じられなかった。 「はぁ、なんか食欲ないなぁ………」 と呟く声にも元気がない。いつの間にかミックスサンドを平らげた愛実が頬杖をつき、卑しいものを見ているかのように口角を上げている。目を細めてジーッとこちらを窺う様子が、愛くるしい猫を連想させた。 しかしニヤついている所を見ると、まるで面白いものを見ているかのようで、それがまた腹立たしく感じた。 「………なに? なんか言いたそうな顔をしてるけど」 「別にー。やっぱさっきのって元カレじゃないのかなって思ってさ」 愛実には今朝起きた事を話していた。 『何それ、面白そうじゃん』 と他人事のように言い、またケラケラ笑う姿にいっそぶん殴ってやりたいと思ったのは内緒。 「違う。そんな『武内りょう』っていう人知らないもん」 「アカウント名変えてるのかもよ。本名は伏せてるのかも」 「それでもあのメッセージはないわ………」 思い出してフッと鼻で笑った。すると突然愛実が顔を伏せて、電動マッサージでも受けているかのように肩が震えていた。 どうしたんだろうと顔を覗くと、笑いを堪えているようだった。 「なによー。笑いたきゃ笑えばいいじゃん」 「いや、ごめんね。なんかちょっと、フフフッ」 「ムカつくーっ! 他人事だからって、失礼なやつだなあ」 「だってすごい元気ないんだもん。やつれちゃうよ?」 「んーっ!」 言葉に表す事が出来ず、撥音(はつおん)だけで対抗した。いくら友達でも、人をバカにするような態度をとる事は許されない。 なんて最低な女だ。 私は無愛想な目で愛実を睨み付けてやった。 「あっ、うそうそごめんごめん、冗談だから。ねえ、ちょ、ちょっとそんな顔しないでよ。ホントにごめんって」 よっぽど怖い顔をしていたのか、何度も頭を下げてきた。 「もう………。こっちは真剣に相談してるのにさ」 「わかった」 何がわかったのか。 「やっぱ実際に会ってみようよ」 「だからあ………。今朝も言ったけどLINEを交換した覚えもない人とは会いたくないんだってば」 「えー、でもホントに知り合いかもよ?」 「いや、絶対違う」 首を横に振り、断固として否定した。 もう、(らち)があかない。 ふざけてばかりで、相談役として何の役にも立たない愛美には愛想が尽きた。私は食べ切れなかったおにぎりをゴミと一緒にビニール袋にまとめて、椅子から腰を浮かした。 「もういいよ。自分で何とかするから」 そう言葉を投げ捨てて食堂を出ていった。
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