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「よっ」
丸めたビニール袋をゴミかごへ向けて投げると、放物線を描くように綺麗に入った。
「ナイスシュート!」
上手く手首のスナップを効かせたのがよかったね。全く自画自賛とは常にこういう事を言うんだよなあ。
トップアスリート並みのドヤ顔を決めた私は、一人の世界に溶け込んだ。
「………はぁ」
そしてやってくる虚無感に、肩をガックリと落とした。
何やってんだろうこんな所で。早く事務所に戻ろう。
と改めて自分の行動に恥じを知り、バカな事やってないで現実を見据えろと言いたげな心の声が聞こえてきそうである。
「あーあ、愛実もなんかもうちょっとマシな事言ってくれたらいいのに………」
食堂での愛美の言動を思い出すと、心にモヤがかかった。悪い女ではないのだが、悪ふざけが過ぎてブレーキがきかないのが少し困ってしまう。
愛美ボッチにさせちゃった………。まあいいか、あの子なら一人でも問題ないでしょう。
事務所に戻ると、昼休憩から戻っている人は少なく疎らだった。愛美もまだ戻って来ていない。私は自分の席まで足取りを早めた。椅子に腰かけ、直ぐ様スマフォを手にしてLINEを開いた。
相変わらず『例の人』からの返事はなく、まだ既読もついていない。デスクに頬杖をつき、本当に誰なんだろうと再び考え込んだ。
頼りにしていた愛美も全く当てにならず、謎の人物からのLINEも検討が付かない。今頼れるのは自分自身しかいないとそう思った。
ふと窓へ目を向けると、あんなに晴れていた空が、いつの間にか強い雨景色へと変わっていた。
あっ、雨だ。傘持ってきてないなあ………。
天気が崩れている事には動揺しなかった。今はそれよりもこの謎のLINEにしか頭になかった。
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