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僕
僕らはいつも二人で大勢の前に立つ。
一番手前にあるマイクロフォンには目もくれず、ひたすらに僕らが用意してきたネタを彼らに観てもらう。
あなた達の知らない町で、あなた達の知ることのない劇場。
そこを僕らのホームグラウンドとして漫才をしている。
売れたいから?
楽しいから?
笑顔になってほしいから?
今の相方とコンビを組み、かれこれ一年半ほど。気づかぬ間にそんな綺麗な夢については考えなくなっていた。
今の生活を必死に続け、今の居心地の良い劇場で漫才を続けている。
僕はまだ漫才師としての目標を失っているわけじゃない。有名な大会の予選にも今のコンビの前から、毎年応募している。
しかし、今を必死になりすぎてそんなことに僕はまだ、気づけていないのだ。
僕は彼の右側で、つまるところあなた達から観て左側を立ち位置としている。
簡単に言うボケ役。
基本的にネタを考えるのも僕。
僕らのコンビのネタの全ては僕の作ったものなので、僕らのネタの評価というのは実質的には僕自身の地の力の評価でもある、ということになる。
もちろん、僕らはコンビとしてやっているので、相方にも相応の責任というのがあったりするものだ。
しかしだ、僕は人に対して甘い訳ではない。特に、笑いにおいては特にだ。
それでも僕は、彼を責めることは出来ない。しない。絶対にだ。
この相方を、僕は彼をどの客よりも笑わせたいと思っている。この一年半。ずっと。
僕は、彼が笑うネタをやりたい、やっていたいと、そう思い続けているからだ。
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