夢の続き

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 金木犀の 匂いがした。  列車の灯り。  遠く 汽笛が聞こえる。  涙が止まらないのは 君の温もりがまだ  この手のひらに 残っているから。  高台から見下ろす 街の灯が滲んでいる。  まだ隣に 君の気配がするような錯覚。  夜風に乗って 金木犀の香り。  君の香り。  いとおしい幻。  真っ黒な夜空に 点々と星が揺れる。    涙が止まらないのは まだ君が傍に居るような気がするから。  もうすぐ 夜が終わる。  風が暖かい。  この夜の中に 君が居る。  空に 一筋の光。  君の聲を 想い出してみる。  汽笛が聞こえた気がした。  時が過ぎれば いつかは忘れていく想い。  一夜一夜の夢のように 重なり積もっていく時間。  涙が止まらないのは 君を忘れたくないから。  遠い夢のように 忘れていってしまうのが怖いから。  儚い幻。    夢の続きを追いかけるように 振り返った。  東の低い空に 夜明けの金星が瞬いていた。                        《End》
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