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「いや、すみませんね。担当が風邪で休んでしまってね」
「いえ、大丈夫です。ゆっくり休むようにお伝えください」
俺は作業着の上にコートを2枚重ね着をして冷凍庫の扉の前に立つ。案内してくれたスタッフは、扉に手をかけた。
「大きくて貯蔵する分には問題ないのですが、ずいぶん古いんで調子が悪くて。開けるのも…よいしょ!」
なんとか重い扉を開けてたスタッフは、どうぞとばかりに手を扉の中に向けた。
俺は扉の中に入って、広い貯蔵庫を見渡した。魚やエビ、カニといった様々な魚介が種類別に棚に置かれている。
「…うん?」
「どうかしましたか?」
「いや…」
冷凍庫の奥の方で白い何か業務通り過ぎたような気がした。不思議に思って、棚の間を通り奥に進んでいく。白い何かが通った通りを除いてみると、白い着物を来た女性が立っていた。
「…人?」
「…あなた、この姿の私が見えるの?」
よく見ると肌が雪のように白く、黒い髪は絹のようにサラサラとなびく。
白い着物を来た女性は、ゆっくり近寄ってくると彼女の見惚れていた俺の頰に手を当てる。
「つ、冷たい!」
「熱っ!…でも、触れられる」
彼女は不思議そうに自分の手と俺の顔を見比べる。
彼女の手をよく見ると、親指以外の指が溶けたようになくなっていた。
「て、手が!…と、と、とけっ」
「北村さん!?どうしたんですか!」
誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた気がしたが、
俺の目の前は真っ暗になっていき、意識が途切れた。
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