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義信と綾
その日は三月とは思えない寒い日だった。だけど雲一つ無い真っ青な空がどこまでも続く素晴らしい天気だった。昨日の雪景色が嘘の様な快晴の空だけど、日陰の雪は未だ融けずに残っている。
その未だ融けきらない残雪を見ながら、僕は昨日の事を思い出していた。
僕の名前は田所義信。高校二年生だ。都内でも有数の進学校に通う僕の成績は学年でいつもトップだ。しかし、今まで彼女が居たことは無かった。彼女を作ることは勉強の妨げ以外の何者でも無いと強く考えていたからだ。
それが、あの日、三学期の初めに転校してきたあの娘、安曇綾が僕の人生を大きく変えたんだ。初めての一目惚れだった。勿論、容姿はドンピシャ好みなだけで無く、成績も僕とトップを争うほど優秀で、いつも前向きで、誰にでも優しい素晴らしい女の子だった。
完全に惚れてしまった僕は何とか告白しようと何度も試みたが、彼女いない歴十七年を誇る経験の無さから、中々切り出せずにいた。僕の中の恋愛に対する考えは氷の様に冷たくて、どんなに勇気を振り絞ってもその氷を溶かして前に進む勇気が出なかったんだ。
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