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楽だろうし。と糸川は続けることが出来なかった。
グラスをテーブルへと置いたその手で小野寺は、糸川のパプリカを摘まんでいない方の、テーブルの上に置かれていた手を覆った。
「酒の勢いでは、嫌だ」
「顕・・・?」
自分をすぐ近くで、真っ直ぐと見返してくる糸川の視線からは、小野寺は顔を目を背けたが、糸川のに重ねている手はそのままにしていた。
露わになった小野寺の左の首筋にほくろを見付けてしまい、それが糸川の食欲を性欲へと切り替えるスイッチになった。
「フォンデュ、顕を食べてからでもいい?」
「あぁ、〆にミートソースを入れて、リゾットにするから」
思い掛けないメニューに糸川は一瞬驚いたが、すぐに口元を緩める。
「ガッツリだね。いっぱい運動して、腹減らしておかないと」
それには、小野寺は黙って苦笑しただけだった。
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