1 フォンデュで本番

3/3
前へ
/9ページ
次へ
 楽だろうし。と糸川は続けることが出来なかった。 グラスをテーブルへと置いたその手で小野寺は、糸川のパプリカを摘まんでいない方の、テーブルの上に置かれていた手を覆った。 「酒の勢いでは、嫌だ」 「顕・・・?」  自分をすぐ近くで、真っ直ぐと見返してくる糸川の視線からは、小野寺は顔を目を背けたが、糸川のに重ねている手はそのままにしていた。  露わになった小野寺の左の首筋にほくろを見付けてしまい、それが糸川の食欲を性欲へと切り替えるスイッチになった。 「フォンデュ、顕を食べてからでもいい?」 「あぁ、〆にミートソースを入れて、リゾットにするから」  思い掛けないメニューに糸川は一瞬驚いたが、すぐに口元を緩める。 「ガッツリだね。いっぱい運動して、腹減らしておかないと」  それには、小野寺は黙って苦笑しただけだった。 
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加