虐遇

2/4
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
むかし,むかし,あるところに22歳の母親と,18歳の彼氏が暮らしておりました。 22歳の母親は,17歳のときに当時付き合っていた彼氏との間に娘をもうけました。娘は愛らしい薄茶色の目と絹のように柔らかい真っ直ぐな,それはそれは美しい髪の毛をもっていました。 娘の楽しみは,母親がその美しい髪の毛を梳かして,編んで,可愛くしてくれることでした。母親の細くて長い真っ白な指の先にある綺麗な爪を見るのも大好きでした。 そんな母親は陽が落ちると,美しく着飾り丁寧に化粧をして娘を寝かしつけてから夜の街へと消えて行きます。フカフカのソファに身を沈み込ませ,1本10万円もする高級なお酒を頼む男性に笑顔を振りまいているときの母親は幸せそうな女の顔をしています。誰も母親を指名することなく朝を迎える日は,疲れた身体を引きずるようにして娘の眠る住まいへと戻り,化粧を落として布団に転がり,死んだように眠りにつきます。 娘は勝手に起きて,勝手に冷蔵を漁り,棚に置かれたスナック菓子を口にします。母親を起こさないように注意しながら,静かにスナック菓子を噛み締めます。 しかし,夕方になると家のドアが激しく音を立てて開けられ,今年18歳になった新しい男が入ってきます。金髪に近い髪の毛のその男は家を建てる仕事をしていて,天気の悪い日や仕事が少ないときにはずっと家にいます。 娘はその男が来ると,必ず外に出されるのですが,それはベランダだったり玄関の外だったりと場所は決まっていません。寒い日に薄着のままベランダに何時間も出されることもあります。それでも我慢するしかありません。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!