右腕の時計

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 ちょっとしたキッカケで、ひょんなことを思い出すことがある。集中力が散漫な時など特に。  先日、叔父さんに手紙を書こうと思い立ったが、ボクの部屋には机がないので、わざわざカフェまで行った。机が無いというのは半分言い訳で、小説家志望というクセに、筆不精なので、カフェに行くなり何なりして、やらなければいけない状況を作らなければきっと途中で投げ出すと思ったのだ。  深夜働いているボクは、仕事前によく、このカフェに立ち寄って、いつもは窓側の席で、表通りを眺めながらボンヤリと時間を過ごした。  この日は、いつもと違う席に座った。そちらのほうが椅子が柔らかくて、落ち着きそうだし、窓際の席なんかに座れば、結局いつもの通り、ボンヤリと過ごしてしまいそうな気がしたのだ。
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