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「いや、気の所為だよ。 お前の勘違い。 こうやって過ごしてるのが、 たまたま俺だからだよ。」 「そうなのかな……。 でも、聡は他の男の子よりずっと 魅力的だよ。 強がりな所も、結構顔に出る所も、 色んなことを受け入れて逃げない所、 立ち向かってく姿勢が私は好きだよ。」 千咲の目には、そんな風には見えるのか。 今まで、顔しか言われなかった 俺の中身を、魅力的だという。 でも、千咲が思うような人間でもない。 ずるいし、弱いし、つまらない。 千咲の考えを認めるのが怖かった。 「そんないいもんじゃねーよ。」 「ううん、聡は素敵な人だよ。 私とは大違い……。」 「お前のがずっといい、 俺なんか……ずるいし、弱いし、 今でもお前を利用してる。」 千咲は俺の顔を手で包んで、 「聡がどう思うかは自由だけど 間違いなく、今まで 出会った人の中で一番魅力的。 弱い所も、ずるい所も嫌いじゃない。」 そういって笑った。 千咲の言葉は、今まで我慢してきた事や、 怒りで収めてきた物を呼び覚ます。 辛かった、でも言えなかった。 顔だけの自分が嫌で勉強しても、 誰もみてくれず、褒めてもくれなかった。 どんだけ嫌な思いをしても、 負けたくなくて学校に来た。 そして千咲と出会い……。 全て受け入れてもらえた気がした。 視界がボヤけていく。 「えー。なんで泣くの! 好きなの嫌だった?ごめんね?」 「いや、嬉しいよ。 ありがとう千咲……。 良かったら俺と付き合って。」 「うん。」 千咲は俺を抱きしめ、 涙が止まるまでそうしてくれていた。 ………… …………………。 16才の千咲と俺は付き合っていた。 この頃の千咲は純粋で無邪気だった。 こんな千咲を壊したのは、 他でもない俺と、 憎むべき千咲の両親、『菊池夫妻』。 俺に光をくれた千咲に、 俺は……。 …ごめんな。
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