復讐

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こんなんじゃ駄目だ。 何か、何かしないと………。 「千咲は…、今日いつ来た?」 泣くナナに尋ねる。 ナナは黙り、おにぎりとポカリの入った 袋をぎゅっと握ったまま。 「いつだ?」 俺はナナの肩をぎゅっと持って、 脅すように睨んだ。 「今さっき…。 でも、千咲ちゃんに言わないで って言われてたから 私からだって事にしてって、 もう、会うつもりないって……。 でも私、黙ってられなくて…。」 言い訳の様なそんな答えだった。 俺に言い訳はいらないよ、ナナ。 寧ろ、有難い。 会ったって俺に何が出来るだろう。 謝罪か?感謝を伝える? 違う、でも、会わなければ絶対駄目だ。 「俺ちょっと行ってくる。」 ジャージだ、でもいい、時間が無い。 千咲が帰ってしまう。 今行った所でもう帰ってるかも しれない、でも行くよ。 「オニイ、頑張ってね……。」 「ナナ、ありがと。」 そう言い、するっと階段を降り、 玄関から外へ。 久しぶりに出た外は乾燥した風で、 身体が一気に重くなった。 飯も食ってないから余計だろう。 元々走るのなんか得意じゃない、 でも1番の速度で走った。 会わないとと、気持ちだけが先走る。 俺の家は河原三番地、 千咲の家は河原四番地、 大した距離はなく 千咲の家に着いてしまった。 そういや何も考えず飛び出してきた、 携帯も持ってきていない。 「ハァハァ……馬鹿か俺はっ……。」 本当に、馬鹿だな。 後先考えず色んな行動を取って それを他人のせいにし、 自分の殻に閉じこもり、周りを何一つ 見ようとはしなかった。 今でもそうだ、何も見えちゃいない。 千咲、お前はここにいるんだよな…。 なのに、こんな近くにいるのに会えない…。 暫く千咲の家を見ていた。
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