千咲

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千咲

「いてぇなっ。」 無茶苦茶しやがる。 無理矢理体育館倉庫に押し込み、 殴跳び箱にもたれ掛からされた。 高校に入った俺だったが、 何一つとして変わらなかった。 変わらない所か、俺はイジメの対象 所謂、『おもちゃ』になった。 男や女とわず。 「いてぇのが好きなんだろ?」 どこの誰か分かんねぇ奴に、 呼び出されて、殴られたり 遊ばれたり、そんで、セックス。 そんな毎日になった。 耐えて耐えて耐え続ければ満足か? 今日呼び出された奴はとくに最悪、 暴力は凄いわ、何もなく急に 入れるわで気持ちいい所の話じゃない。 髪を引っ張り、言う。 「いいって言ってみろよ。」 ふざけんな、いいワケないだろ…。 早く終わればいいのにと願った。 願い通りといっていいのか 分からないが、 突然何かがガシャンと 音を立て倒れた。 沢山のバスケットボールが こっちに転がってきて、 何が起きたのかと音のする方を見る。 一人の女が寝転がっていて、 足がこっちに向いている。 多分蹴飛ばしてこかしたのは こいつだろう。 「五月蝿い。死ね。」 そういった。 呼び出したやつは、 一瞬何かいいかけて止め、 どっかに行った。 俺は情けなくて、恥ずかしかった。 こんな事、周知はされているだろう。 でも、周知されているのと、 見られるのは違う。 又笑いの種になるのかなと思った。 身を立て直してここからさりたい。 出ている血を拭った。 その女はこっちに寄ってきて、 服を脱ぎはじめた。 お前もか…、ちくしょう……。 俺ってなんなんだよ……。 悔しくてしょうが無かった。 「コレ着れば?」 そういって差し出してきた 脱いだ服、カーディガン。 「要らない?」 「いや、ありがとう。助かる……。」 その女は何にも動じなかった。 俺を普通の顔で見下ろしていた。 体育館倉庫の一つだけある窓から、 差し込む光に照らされた女は、 艶々のロングの黒髪で、 とても美人だった。 「何?」 「いや……。別に。」 少しだけ見とれてしまったけれど、 近づいたら駄目だ、 そう思って帰ろうとした。 「ねぇ、そのまま授業出るの?」 「いや今日は、もう帰る。」 「なら、私も帰る。」 その女はそう言って立ち上がった。 「あんた、同じクラスの 水野聡だよね? あれあんたの彼氏かなんか? ヤバいやつだね。」 言ってる事が暫く理解出来なかった。 この女は俺の存在は知っているのに、 俺の事は何にも知らないのか…。
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