千咲

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ケラケラ笑う姿に、少し安堵した。 「そんなんじゃない。」 「へぇ、そうなんだ。 まぁどうでもいいけど。」 持っていたゲーム機や、携帯、 お菓子などを鞄に詰め込みながら 言っていた。 この女はこの状況を どう思ったんだろうか。 気になって聞いてみる。 「お前、なんも思わないの?」 「何を?」 「この状況……?」 「んー。ムカついたかな。 暴力出す奴嫌いなんだよね。」 普通の事を言ってる様で、 色々ぶっ飛んでるなと思った。 「そういや、鞄どうするの? ……ってかそれじゃ、取りいくの無理か。」 「いい、置いていく。」 「ふうん。なら帰ろう。」 そう行って手を引かれた。 なんなんだこいつは……。 俺と絡んでこいつになんの得がある? 俺といて恥ずかしくないのか……? 周りの人がこっちを見ていた。 「家、何処?」 「河原三番地。」 「家と近いね、走れる? 教師が見てる。」 確かに周りの人の目の中に、 教師の姿もあった。 女は、手を引きながら 猛ダッシュし始める。 足とか肩とか痛かったけど、 一緒になって走った。 誰かとこうやって普通に話して、 馬鹿みたいな事をするのは 久しぶりだった。 学校から少し離れ、 住宅街に入った所で止まり、息を整えた。 「アハハハッ久しぶりに走った! ヤバい、一瞬で疲れた、大丈夫?」 「あっああ、うん……。」 よく分からないまま着いてきて しまったけれど、 このまま帰っても五月蝿い母親がいる。 何処かで時間を潰してから帰らないと。 いつもやってる事だけど、 今日は勝手が違う。 「俺はどっかで時間潰してから帰るわ。 コレ、ありがとう、洗って返す。」 と言ってカーディガンを引っ張った。 「そっか。綺麗にしてから帰る感じ?」 「いや、母親がいる。 だから暫く帰れない。」 「なら家、来なよ。誰もいないから。」 どういう意味だろう。 家に誰も居ないから相手しろって事か? 「いや、いい。」 「そんなドロドロで帰るつもり?」 俺の姿を見てそう言った。 ドロドロも何もいつもこんな感じで ばれない様に帰っている。 「まず、手当てが先? どっちでもいいね、行こう!」 「おい、ちょっと待って。」 為す術もなく、 着いて行くしか道は無かった。
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