千咲

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その女の家は、 この辺りの有名な議員の家だった。 「お前、菊池の家の子だったのか。」 菊池家、長年この街の 議員を務めてる家系で、 確か大きな会社の社長だったはず。 「うん…、でもいいもんじゃないよ。」 そういって、入っていく。 家の周りは高い塀でおおわれていて、 中に入ると階段があり、 それを登ると大きな庭があり、 綺麗に駆られた芝生と、整えられた木 種類ごとに植えられてる花。 その下は駐車場らしいスペースがあった。 玄関は指紋で開く様なタイプのもので、 お金持ち感が半端じゃなかった。 「凄いな。」 「造りが嫌味の間違いでしょ。」 玄関を開き、家に入る。 まぁ云わずもがな、 全てのものが高級品ですという感じ。 「こっち。」 俺は言われるままついて行く。 そのまま階段を上がり、4階まで来た。 1つのドアを開いたそこは脱衣所だった。 「とりあえずさ、 シャワー浴びて来なよ。 ここ、私しか使わない所だから。 テキトーに使っていいよ。」 「うん、ありがとう……。」 「服脱いで、お風呂場入ったら 声掛けて、ドアん外いるから。」 と言って戸を閉めた。 あんな場面に遭遇し、 初めて喋った俺を家まで上げて、 あの女は危機感というか そういうものが無いんだろうか? 困惑する。 「ねぇ、もういい?」 「まだ!待って。」 急いで服を脱いで、 風呂場に入り声を掛ける。 「制服洗濯しちゃっていいよね?」 「あ、うん、大丈夫。」 「分かった。それと、 ジャージはあるんだけど、 下着がないから、暫くノーパンだけど 我慢してね。じゃあ。」 と言って又出ていった。 お言葉に甘えてシャワーを浴びる。 傷口にお湯がしみたけど、 それより体を流せるのは嬉しい。 あの女は又戸を開けて又出ていった。 着替え持ってきてくれたのかな。 よく分からない女だけど、 今の自分には助かる事が多かったし、 何よりも、ぶっきらぼうでも 優しくして貰えた事に、涙がでる。 シャワーが全て流してくれるから 今少し、泣いてもいいよな。
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