千咲

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シャワーを借りて、服を着たはいいけど あの女はどこへ行ったんだろう。 する事がないので、 脱衣所の椅子に座っていた。 脱衣所の鏡の周りには、 全て女が使うものが置いてあった。 そこに歯ブラシは1つだけ。 本当に1人専用の風呂なんだと考えてたら コンコンとノックの音が聞こえ、 「ごめん、もう上がってる?」 と問いかけがあった。 「うん。上がった、ありがとう。」 戸を開けたそこにはびしょびしょの 髪のクソ変な服を着た女が立っていた。 「待たせたかな? 私もシャワーしてた。」 「いい、お邪魔してんの俺だし。」 「じゃあ部屋行くか。」 それを言われると嫌な予感しかしない。 色んな事に疑い深くなってしまった。 「どしたの?」 「何もないよ。」 ふぅん、と言って一番奥の部屋をあけた。 部屋の中は……、 TheOTAKUって感じの部屋で、 至る所にアニメポスター貼りまくりの、 数多くあるDVD、ゲーム、漫画、 はっきり言って色気がない。 「ここ座って。傷口見せて。」 とソファをポムポムした。 言われるまま座り、服をまくった。 「最悪だね、酷い……。」 擦り傷に青あざ、思ったより酷かった。 そこを消毒したり、湿布貼ったり してくれる。 「痛くない?」 痛くはない、本当に痛いのは……。 なんだ……? 自分の心だ。 「何でこんなしてくれんの?」 俺は一番疑問に思った事を聞いた。 その女は困った顔をして、 さっき聞いた言葉を言った。 「私は暴力出す奴が嫌い。 うちの父親もそうだからね……。 ママがいつも殴られてるの……。」 「マジか……。」 「私には今んとこ手は出さないけどね。」 聞いちゃいけない事を聞いてしまった。 「だから、水野君を連れてきたのは、 私のエゴ。本当は学校の誰とも話す つもり無かったんだけどね……。」 「何で?」 「女の子の馴れ合いが好きじゃない。 趣味も合わないし。 男の子は何か、怖いし…。」 「いや、俺も男だけど……?」 「水野君は細いし、女の子みたいだし…。」 この女は変な事をする目的ではなく、 ただ助けたいが為に連れてきただけ。 俺が細くて、弱そうに見えたからか。 世間知らずも甚だしい。 「あんまりそういう事しない方がいい。 親がいない家に、弱そうに見えても 男を連れ込んだら危ない。」 「忠告ありがとう。 でも、もう誰とも話さないし大丈夫。」 そういって、鞄からゲーム機を取り出した。
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