千咲

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その女は勝手にゲームを始めてしまった。 自由過ぎる…… 。 確かにこれじゃ、 友達なんて出来ないだろう。 「お前、名前何て言うの?」 暇なので喋りかけてみる。 「千咲。」 「…………。」 会話にならなくなった。 「何か喋ろうぜ。」 「えっだって、 水野君危ない人なんでしょ? 危ない人とは喋りたくない。」 なんだこいつ………。 忠告した事をきいてるつもりか? 「いや、俺は危なくない。 お前に何もするつもりも無い。」 「なら、いいけど。」 とパタンとゲーム機を閉じた。 何でもかんでも鵜呑みにするんだなと、 さすがお嬢だけあると思った。 「俺の事は聡でいいよ。 ゲーム好きなん?」 「うん、好き、大好き。 聡はゲーム好き?」 話題は、正解だった。 「そこそこかな。」 「何するの?どんなんが好き?」 無邪気に話す千咲という女は、 俺に興味をもった。 顔や身体は大人びて見えるのに、 中身はひどく幼稚。 でもある程度の知識はある様で、 興味があるものと、 興味がないものの、 食いつき方というものがあり、 興味がないものには全く関心がない。 それだけはハッキリ分かった。 「聡、これからも話していい?」 洗濯が終わり、着替えをさせてもらい、 親が帰ってくる前に俺は帰る。 菊池両親と顔を合わせるのは嫌だ。 「いいけど、俺といると 千咲が変な目で見られるよ。」 「いいよ、私、そういうの 全然気にならない。」 「そっか、なら俺は大丈夫。」 「嬉しい!」 そういって、抱きついてくる。 本当に、何も分かってない。 男に意味もなく抱きつくなと 叱ろうかと思ったけど、 コロコロ笑うその笑顔に、 何も言えなくなった。 「じゃあ、又明日学校で! バイバイ~!」 「おう。」 綺麗に洗濯された制服から、 千咲と同じ香りがした。 不幸せな出来事は、 幸せを運んできてくれた。
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