晴れ後曇り後雨

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晴れ後曇り後雨

「1、2、3、、、」 その声は、夕暮れで鮮やかに彩られた公園にあった。 「9、10。もーいーかーい」 、、、。 「もーいーかーい」 、、、。 呼び掛けはただ虚しく。 振り向く少年の瞳には、誰もいない公園と夕暮れが悲し気に映るだけだった。 空を飛ぶカラスは、そんな少年をあざ笑うかのように鳴きながら飛び去っていく。 その場にしゃがみこみ、しくしくと泣く少年。 「ばかカラス!あっちいけ!」 罵声を放つ声に、うつ向く少年の顔が自然と上がる。 目の前には長い髪とスカートを翻しながらカラスに向かう少女の姿が。 「大丈夫?」 少女は少年に手を差し伸べると、ニコリと笑った。 少年は目に浮かぶ涙を手で払うと、その手を少女の手に乗せる。 引き起こされた後、まるで母が子を慰めるかのように少女は少年の頭をヨシヨシと撫でた。 「悲しいときはね、こうしてもらうのが一番いいんだって。 お母さんが教えてくれての。 私も悲しいときはよくお母さんにやってもらったんだ」 「もらったんだ?」 過去形である話に少年は疑問を抱いた。 その質問に、ニコリと笑っていた顔が曇る。 「お母さん、死んじゃったの」 曇りは雨に変わり、少女はその場にしゃがみ込んだ。 晴れ後曇り後雨。 まるで天気のように変わる喜怒哀楽の感情に驚く少年だったが、自然と手が少女の頭を撫でていた。 顔を上げる少女。 その目には、雨上がりの後に見える虹のような、そんな少年の笑顔が映った。
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