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電話を切ってから、少し小走りで楽屋に向った。楽屋の扉を二回ノックすると中から『はーい』と言う悠人の声が聞こえた。
「入るよ。」
私も声をかけてから、扉を開けると既に私服に着替え終わった彼がテーブルの上のお菓子を摘んでいた。
「まだ、時間あるけどあっちの楽屋使えるみたいだから向かっちゃおう。」
「りょーかい!」
荷物を持って、部屋の中をグルっと見回してから『忘れ物なし』と指差し確認をしてから楽屋の入り口に向かってくる。
「百合姉、あーん。」
「へ?」
思わず口を開いてしまった隙間に彼は一枚のクッキーを押し込んできた。
「甘くて、おいしいよ。」
「…。」
昔から、悪戯好きな悠人だった。
「さ、行こうーー。」
ニコニコしながら、楽屋を出る悠人の後を追うように私も楽屋を出た。
「次の撮影所ってあの古いところだよね。」
「そうよ、あそこは古いけどあの撮影所が好きってカメラマンさんは多いから…あ、でも、あそこ建て直しになるって噂もあるのよね。」
「えーそうなの、俺も結構好きなのにー。」
他愛もない話をしながら、地下駐車場に着いた。車のロックを解除しながら、後ろの扉を開ける。
「ねぇ、俺…助手席でもいいんだけど…。」
「ダメよ、後ろ乗って。」
後ろ席に悠人を押し込んでから、運転席に座りエンジンをかけた。
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