4人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
私の前に食べ物を置いた人間は、まだ大人とは程遠い――小さな少年だった。
その少年は私に不器用な笑みを見せると、そのままどこかに行ってしまった。
残された私と、少年が置いていった食べ物。
空腹で苦しんでいた私は、目の前の食べ物を食べようと必死に首を伸ばす。
けれど、どれだけ頑張っても食べ物を食べることが出来なかった。
でも私は諦めなかった。
必死に、死に物狂いで体を伸ばし――やっとの思いで食べ物を自分の近くに引き寄せることが出来た。
どれだけの時が経ったのかはわからないが、それでも久しぶりの食べ物に。
私は、無我夢中で食べた。
――美味しいッ! と。
心の底からそう思えるほど、少年が置いていった食べ物は極上の味だった。
最初のコメントを投稿しよう!