唯一の恩を返し続ける

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唯一の恩を返し続ける

 ――ひな鳥でしかなかった私。  そもそも満足に走ることさえ出来ない……出来なかった私は、どうやらいつの間にか、違う生き物になっていたようだ。  あの少年を追いかける為に手を前に出す――すると、手は地面についていた。  あの少年を追いかける為に足を前に出す――すると、足は地面を蹴っていた。  駆け抜ける私は……四足の生き物になっていた。  ひな鳥から四足の生き物――なるほど、これは便利だ。  足は多ければ多いほど、走る速度が速くなる。  これでより一層あの少年に追いつけることが出来る。  だが少年がどこに行ったのか、そもそも少年がどこにいるのかわからない。  探そうにも私の周りには大勢の人間がいる。  あの少年の笑顔を思い出して探す……中々に難しそうだ。  だが――“ニオイ”は覚えている。  あの少年のニオイ……それを辿って行けば、あの少年の元にいずれ辿り着く!
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