唯一の恩を返し続ける

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 地面を蹴って、走って、駆け抜けて。  微かだったニオイは、だが確実に強くなっていく。  あともう少し……もう少しだ!  あと少しで、あの少年がいる――そう確信した私。  疲れることさえ忘れた私の体は、そのニオイが一番強くなっているところへ向かう。  そして、一番そのニオイが強くなっている人間を見つけた! ……が。 「――ん? なんだおまえ?」  少年のニオイを持つソレは――“少年”ではなかった。  目の前にいる、少年のニオイを放っているソレは、明らかに人間の大人だ。  顔など全然違う。全く違う。  しかし、ニオイはあの少年のニオイそのものだ。  何故? ……どうして……?  理解が出来なかった私に、だが少年のニオイを放つソレは笑みを浮かべる。 「おまえ……腹、減ってんのか?」
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