―アサガオと松の井戸端会議―

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 植物が何を思っているのかを知るものはいない。彼ら彼女らは無口で、ただ成長していく。 地中から水と養分を引き上げ、地上の葉で水分を飛ばす様子は、人間を丁度逆さにしたような感じにみえる。  私は幼い時分からいつかこの不思議な植物たちの考えていることを知りたいと思っていた。 彼ら彼女らが何を思って生きているのか。そもそも喜怒哀楽はあるのだろうか。恋愛はするのだろうか。考えれば考えるほど次々に疑問がうまれ、その魅力に引き込まれていく……。  そこで私は画期的なマシーンを発明した。その名も『プラントに移らんと』である。 このマシーンは実際に自分自身が一時的に植物になることで、その植物の気持ちを理解しようというものである。 詳しい原理を言うと長くなるので簡単に説明するが、ある植物を粒子レベルでスキャンしてそのデータから自分自身をその植物へと変化させるという仕組みだ。ただこの変化した状態は非常に不安定で短時間しか変化することはできない。 とはいえ短時間であれ、その植物になることができればその植物の考えていることが少しは解るはずだ。  そんな期待を両手で持ちつつ、さっそく僕は外に出て適当な植物を探すことにした。
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