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悔しいことに僕はそのふたりの会話に入ることができなかった。というのも僕は話せないのだ。話し方が分からないのだ。二人が何を言っているのかは分かるのだが、声をどう発していいのか分からないのだ。
そうして僕をテーマにしてふたりが暫く会話を続けていると、『プラントに移らんと』の先端にあるツクシの頭のような突起が赤く点滅しはじめていることに気がついた。
そろそろか。そう思って一、二分後、とうとう僕の身体は元の人間へと戻ってしまった。
人間に戻った僕はアサガオを見下ろし、振り返って松を見上げ、そして何だか申し訳なさと居心地の悪さを覚え、すぐにその場から離れた。
早歩きをしながら僕はにやついていた。その間に出会った住人がこっちを見るくらいに。
成功だ。会話こそできなかったが、植物の会話を聞くことができた。それに他にも沢山のことを知ることができた。
まず、アサガオの目が蔓の先端にあり四方八方見渡せること。次ぎに植物が会話し、しかも草本木本関係なしにそれができること。そして会話の内容がそこら辺の人間と同じくらいのものであることだ。―これは非常に興味深い。
そうして当てもなく歩きながら次は何になろうかと考えた。
かんかんの太陽はもう真上にきて、水蒸気がこの町一帯を蒸し風呂状態にしていたがそんなこと関係なしに、顔の汗を袖で拭いた行為はしていないのと同じように―夢中で口を尖らせながら考えた。
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