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私が苦手なのは計算だ。公式を覚えて解けばいいだけだけど、何パターンも覚えようとする内色々混じって混乱してしまう。
羽鳥先生はそんな私に「計算は数をこなせばいいんだよ」と言ってこのプリント課題を出してくれた。
「おっ、あともうちょっとで終わりじゃないか。すごいなあ、前は出来なかったこの式も完璧に出来てる」
羽鳥先生は机の横にしゃがみ、座っている私と視線を合わせてから一枚一枚チェックしていく。慣れた動作でプリントをめくる長い指と、黒縁眼鏡の向こうの優しそうな目に私の目は釘付けになる。
「よし。じゃあ新しいの持ってくるからな。覚悟しとけよー」
何枚か残ったプリントの束を置き直し、ぽんと肩を叩いてから他の子のところへ去って行く。シャンプーなのか香水なのかわからないけど、石鹸っぽい匂いがいつもする。
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