0章 弟子に生贄として使われました。

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ゴリラに反応したのか、6歳で引き取ったということに反応したのかは分からないが、目を見開いて驚愕の様子を見せる。 「僕の生い立ちに対するその言い方……まさか師匠!?」 「おう。信じてもらえて何よりだが、ここまで一向に信じようとしなかったくせに、途端に信じる辺り、めちゃくちゃ嘘くせえな」 実は最初から信じてはいたが、こちらを煽るためにわざと知らないフリをしていた可能性を強く感じるぐらいのわざとらしさだ。 「ま、実際に嘘ですけどね。師匠が女になったことは知ってましたし。まあ、こんな美少女になることは想像してませんでしたけどね」 「ああ、やっぱ嘘なのか……って何でてめえ、俺が女になったこと知ってたんだ!?」 「だって師匠をその姿にしたのは、僕ですもん。正確には、老いと性別を生贄に捧げたって形ですけど」 「はあああああ!!?」 聞き捨てならない言葉を聞いた。 え、俺こいつに女にされたの?っていうか老いと性別を生贄に捧げるって何?良く寿命を生贄に捧げるってのは聞くけど、老いと性別を生贄に捧げるって何なんだ?何の魔生物を召喚したんだ?こいつは。 というか、師匠を生贄に捧げるって頭のネジぶっ飛んでんじゃねえのかこいつ。魔術師って頭おかしいやつらの集団だけど、師に対する敬意は払うぞ。というか、大概師匠には絶対服従って話だぞ。 教育の仕方を間違えた……と頭を抱えていると、何かを企んでそうなやばい笑みを浮かべた弟子に肩を叩かれた。身長が30cmは縮んだから、誠に遺憾なことに弟子を見上げる形になってるんだが、下から見た時のこいつの笑顔はやばさが8割増しぐらいになっている。 「安心してください。これから僕が師匠の代わりに仕事に出ますから、師匠は家で待っていていただくだけで大丈夫です。家事も今まで通り僕がやりますので。あ、でもたまには洗濯とかしていただけると助かりますかね」 何だその悠々自適な生活。魅力的だがちょっと待て。仕事に出るってこいつ、今仕事に行ったら高卒だぞ。多分魔術で食ってくつもりなんだろうが、何の仕事するんだ? 「いや、話を逸らそうとしてたけど、そうはいくか!とっとと戻せ!俺の性別と歳を返せ!いややっぱり歳はいい!!」 歳を経ることで得たものもあるが、正直これからまた年齢を重ねる方が人生をうまく生きることができそうだ。
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