いつだって傍に

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 夜、ベッドに腰掛けてふと気になったのは、下校するときに愛奈(あいな)と気まずい感じになってしまったことだった。別にわたしには、そんな気はなかった。  それでも、確かにずっと一緒にいる友達に『何がきっかけで仲良くなったんだっけ』なんて、言わない方がよかったのかも知れないよね……。  なんとなくそれが気になって。  ……時計を見ると、時刻は夜の11時になったくらい。いつもだったらまだ起きてる――っていうか、このくらいの時間は普通に愛奈と通話してる頃だ。  それもこなくなるほど、今日のことで傷付いたのかな……? 押し潰してくるような罪悪感にせっつかれて、愛奈の携帯に通話をかけてみることにした。  出てくれなかったらどうしよう?  そういう緊張をしながら待つ時間はとても長くて、もしかしたら数秒くらいのことだったかも知れないのに、何十分か待ったような気分だった。 『……もしもし』  だから、電話の向こうから愛奈の声がしたときには、安心しすぎて涙が出るかと思った。 「もしもし、愛奈!?」 『う、うん。どうかしたの、優花(ゆうか)?』 「えっ、なんか、どうしたってわけでもないけどさ……。い、いま何してるの?」 『今? 今はね、ちょっと近所の公園辺りを散歩してるとこ』 「へぇ、なんか、め、珍しくない?」 『ま、たまにはねぇ~』  ……よかった。なんか、いつも通りっぽい。少しだけ安心して「明日さ――」と口を開いたときだった。 『ん、えっ、な、なに!?』 「……えっ?」 『ちょっと、や、やだ、やめてよ、やっ!』 「え、どうしたの、ねぇ、愛奈!」 『やめてっ! やだ、やだっ!! 誰かたす、ぎゃっ!』  ガチャガチャガチャ!  耳をつんざくような音と共に、愛奈の声が遠くなる。  やだ、とか。  助けて、とか。  やめて、とか。  あとは言葉にならない金切り声とか。 「――――うそ」  血の気が引くってほんとにあるんだって、何故かどこか冷静な頭で思った。それで、そのあとわたしがすることは、もう決まっていた。  助けに行かなきゃ!  取り返しのつかないことになる前に、早く!  普段なら出ようとは思わない夜の街。  場所は大体わかっている――愛奈の家の近くにある公園に向かって、わたしは走り出していた。
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