4人が本棚に入れています
本棚に追加
夜、ベッドに腰掛けてふと気になったのは、下校するときに愛奈と気まずい感じになってしまったことだった。別にわたしには、そんな気はなかった。
それでも、確かにずっと一緒にいる友達に『何がきっかけで仲良くなったんだっけ』なんて、言わない方がよかったのかも知れないよね……。
なんとなくそれが気になって。
……時計を見ると、時刻は夜の11時になったくらい。いつもだったらまだ起きてる――っていうか、このくらいの時間は普通に愛奈と通話してる頃だ。
それもこなくなるほど、今日のことで傷付いたのかな……? 押し潰してくるような罪悪感にせっつかれて、愛奈の携帯に通話をかけてみることにした。
出てくれなかったらどうしよう?
そういう緊張をしながら待つ時間はとても長くて、もしかしたら数秒くらいのことだったかも知れないのに、何十分か待ったような気分だった。
『……もしもし』
だから、電話の向こうから愛奈の声がしたときには、安心しすぎて涙が出るかと思った。
「もしもし、愛奈!?」
『う、うん。どうかしたの、優花?』
「えっ、なんか、どうしたってわけでもないけどさ……。い、いま何してるの?」
『今? 今はね、ちょっと近所の公園辺りを散歩してるとこ』
「へぇ、なんか、め、珍しくない?」
『ま、たまにはねぇ~』
……よかった。なんか、いつも通りっぽい。少しだけ安心して「明日さ――」と口を開いたときだった。
『ん、えっ、な、なに!?』
「……えっ?」
『ちょっと、や、やだ、やめてよ、やっ!』
「え、どうしたの、ねぇ、愛奈!」
『やめてっ! やだ、やだっ!! 誰かたす、ぎゃっ!』
ガチャガチャガチャ!
耳をつんざくような音と共に、愛奈の声が遠くなる。
やだ、とか。
助けて、とか。
やめて、とか。
あとは言葉にならない金切り声とか。
「――――うそ」
血の気が引くってほんとにあるんだって、何故かどこか冷静な頭で思った。それで、そのあとわたしがすることは、もう決まっていた。
助けに行かなきゃ!
取り返しのつかないことになる前に、早く!
普段なら出ようとは思わない夜の街。
場所は大体わかっている――愛奈の家の近くにある公園に向かって、わたしは走り出していた。
最初のコメントを投稿しよう!