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愛奈が電話をかけてきた場所は、たぶん、愛奈の家のすぐ近くにある市営の公園だ。大きな池では時々イベントが催されたりしていて、ほかにも森みたいな場所もあったりして、探険気分でいろいろ歩き回ったのを覚えている。
そのうちお互い成長して、足が遠のいてしまっていたけど……。それでも、わたしたちにとっては思い出深い場所のひとつだった。
走っているうちに見えてきた公園は、夜になるとやっぱり少し暗かったけど、それでも躊躇ったりしてる場合じゃなかった。
「愛奈ぁ、愛奈ーっ!」
いるなら返事して!
……怖くなるような悲鳴とともに電話が切れてから、時間的には10分くらい。何があったのかわからない。携帯にかけても出ないし、やっぱり最後の『たすけて』っていう声が、耳にこびりついて離れない。
普通じゃない。
きっと、ほんとにヤバイことが起こってる!
そう思うと、足がすくんでくる。昔から怖いのは全然だめだったから、いつも愛奈に助けてもらっていた。
怖い話も苦手だし、暗い場所も嫌いだし……けど、今はそんなこと言ってられないし!
「愛奈! ねぇ、いないの、愛奈!?」
喉が嗄れてくる頃になって、携帯にまたかけ直すことに決めた。
出なくてもいい、着信音とか、光とか、そういうものがあれば、たぶんその近くに愛奈はいるはずだから……!
もしそうじゃなかったら……そんな怖すぎる想像も頭を掠めたけど、そこからは目を背けて、走って探し続けた。そうじゃないと、愛奈が戻ってこない想像ばかりが頭の中で膨らんでしまいそうだったから。
そのうち、すぐ近くから携帯の着信音が聞こえてきた。間違いない、最近ネットで人気の歌い手さんの着うたが配信されたって舞い上がってた歌が聞こえてきた。
音を辿って、ようやく見つけた携帯を拾おうと屈んだとき。
後ろから、いきなり強い力で抱きつかれた!
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