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「ちょっ、誰、やだ……!」
怖い。怖い怖い怖い!
喉の奥まで萎縮して声が出ない。けど、早く捜さないと愛奈が……! なんとかもがいていると、耳元で笑い声がした……え、この声って?
「あ、あい……」
「よかった、優花、来てくれたね」
ふふっ、と耳元で嬉しそうに囁きかけてきたのは、愛奈だった。抱きついてきたのが愛奈だったことにも、愛奈がとりあえず無事そうなことにも安心はした。
けど、そうしたら今度は怒りみたいな感情が込み上げてしまう。
だって、どれだけ心配したと思ってるの? あんな気味の悪い電話かけて来て、しかもうちが公園に着いてもすぐには出て来てくれなくて。それで、やっと出て来てくれたと思ったら、こんな驚かせるような感じで……!
「愛奈、なにこれ? さっきのただのイタズラだったわけ?」
「だってさ、こういうきっかけだったでしょ?」
「え、きっかけ?」
何言ってるの?
一瞬、愛奈の言いたいことがよくわからなかった。
きっかけって何の? そもそもわたしが怒ってるのは、あんな変ないたずら電話をしてきたことで――――、
「今度は、ちゃんと来てくれたね」
「今度って、どういう……、」
それを訊こうとして、ふと思い出した。
え、でも……。それがきっかけって……そうなの?
『あいなちゃんって、まだ遊んでるのかな?』
『しらない。たぶんあっちであそんでるよ』
そんな、忘れていたかったこと。あの一言がなかったら、きっとわたしたちは……。
「あのことがあるまでってさ、あたしたち全然仲良くなかったんだよね、確か。だから、たまたま鉢合わせた公園でも全然話さなくてさ……」
「え、そ、そんなこと……」
「ううん、そうだったよ? だって、勇気を出して話しかけたとき、関わるなみたいなこと言われたし。だから、おとなしくしてたんだよね。それなのにさ……」
耳に届いてくるのは、今はもう聞こえていないはずのサイレン。うるさい、うるさいよ、やめてよ、聞きたくないよ……! もう、いっぱい謝ったよ、たくさんごめんなさいしたよ? だからそんなに怒らないでよ……!
立っていられなくなる。
両膝を突いて座り込むわたしの頭上から、声が聞こえる。
「あたしたちが仲良くなったのはね、あれがきっかけなんだよ?」
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