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「なんだ・・・?」
私はびしょ濡れになりながら、雨にけぶる屋根の上に目を凝らした。
黒いボロボロの布に身を包んだ小さな人間だった。
ほお被りの中に白い皺くちゃの顔が覗いている。
男か女かも分からない異形が、嗤いながら踊り狂っているのだ。
そして、その足下には・・・
黒々とした牛の頭部がこちらを見下ろしていた。
「牛の・・・首!!!」
私は急激に息が苦しくなるのを感じた。
足に力が入らず、雨にぬかるんだ地面に倒れこんだ。
薄れゆく意識の中、屋根の上を見上げながら思った。
牛の首を見た者は全てこのようにして・・・
これが、この話の・・・
やがて視界が暗くなり、私は底無しの闇に堕ちていった。
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