ある地方の寒村で

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「・・・厩ヒジリ、とは何です?」 「これも祖父さんから聞いた話なんだが、毎年夏の初め頃この辺を訪れる者がいたらしい。男だか女だかよう分からんかったらしいが、黒いほお被りをした小柄な老人だって話だ。えらく手先が器用で、農具やら何やらの修理をして銭を稼いでたみたいだ。しばらくするといつのまにかいなくなってた。多分、旅して回ってんだろうって話だ。これが厩ヒジリ」 「ほう、それで?」 「そのヒジリはどうも霊力があって、まじないやなんかも出来るということらしかった。それでちょうどひでりで困ってたもんだから、となりの村の連中が雨乞いの祈祷を皆で頼んだ。だがヒジリはすぐには承諾しなかったらしい」
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