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家に帰った後、すぐにあの子に電話をかけてダブルデートの約束を取り付けた。彼女は少し驚いていたけれど、こちらが乗り気になったことを素直に喜んだ。
彼に確認を取るのが後になってしまったが、私が立ち直ったと考えてくれたのかちゃんと承諾してくれた。
私は占い師さんがくれた瓶を見つめた。
ダブルデートの日、あの子が幸せの絶頂にいる時に、この薬をかけてやる。先輩の見ている目の前で彼女に復讐してやるのだ。
週末になってついに約束の日は訪れた。
彼女は相変わらず可愛くて、先輩は相変わらずカッコいい。いつもならこの二人を眺めるのが嫌で嫌で堪らなかったのに、今は楽しくて仕方がない。
だってこの幸せはすぐに崩れるんだから。
私が笑顔を多く見せるから、彼も安心しているみたいだ。
四人でお昼ご飯を食べた後、彼女がカラオケに行きたいと言い出した。お店に向かう途中の道で、なにを歌おうかと二人は楽しそうに話している。
でも残念。もうすぐ時間だよ。
「なあ」
彼が私の腕を掴んで声を掛けてきた。
「元気になってくれたようで良かったよ。最近ずっとふさぎ込んでいたから、心配してたんだ」
優しい言葉に胸が痛む。
この人は私の醜い心も知らず、ずっと私を好いてくれていた。
彼は私を支えようとしてくれていたのに、私が今からやろうとしている行為は、そんな彼の気持ちに背くものだった。
「あのさ、俺」
彼がなにかを言いかける。心なしか私の腕を掴んだ手が震えているようだ。けれど彼はそれ以上言葉を続けずに首を左右させた。
「ごめん、なんでもない」
もしかしたら、彼は気付いているのかも。
こんな馬鹿なことをやめさせようとしてくれているのかも、なんて想像力が働いた。
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