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「きゃあっ!」  彼女が甲高い悲鳴を上げる。 「いや、なに? なんなのこれ!」  ああ、望んだ通りのことが起こった。  彼女の美しい姿がどろどろに溶け出したのだ。そして、同じように私の体もまるでアイスクリームのように溶けていく。 「あは、あははは」  やった。ついにやった!  嬉しさのあまり、私は苦しむ彼女を思い切り抱きしめた。体がどんどん溶けていき、彼女との境界がなくなっていく。  ずっと前から彼女のことが好きだった。  彼女が先輩を好きだと知った時、ショックで食事も喉を通らなかったほどだ。だから先輩が彼女から目をそらす為に告白をしてやったのに、先輩もこの子が好きだったなんて。  私から彼女を奪ったあいつも、私ではなくあんな男を選んだ彼女も許せない。  だからこれは復讐だ。  先輩が青い顔をして彼女の名前を呼んでいる。でも残念でした。この子はもう私の物だ。 「ずっとこうしたかった! 私達は溶けて、混じり合って、一つになるんだ。もう誰にも渡さないよ!」  ああ、なんて気持ちがいいのだろう。  きっとこの薬は体だけでなく、心も溶かす物だったのだ。  先輩への醜い嫉妬心も、彼女へ抱いていた愛情も、彼への罪悪感も、全てが溶け合って私を包み込んでいく。 「これでいつまでも一緒だよ」  溶けて、原型をなくした彼女の唇のあたりに、私は自分の唇を寄せた。
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