2/12
前へ
/14ページ
次へ
「ごめん。俺、他に好きな相手がいるんだ」  先輩に告白をした時、申し訳なさそうな顔で返事をされた。  その好きな人というのが別の誰かだったなら苦しまずに済んだのに、先輩が選んだのは私の親友であるあの子だった。  先輩は背が高くて優しかったから女の子に人気があったし、クラスの友達にも先輩のファンが何人かいた。あの子もその一人だということはずっと前から知っていたけど、しょせんはただ憧れているだけだと思っていたから、特に警戒もしていなかった。  だから彼女が先輩に本気で好意を持っていると知った時にはすごく焦ったものだ。横取りされる前にと思って先輩に告白をしにいったのに、私の思いは突っぱねられた。  それからほんの一週間経ったある日、あの子は嬉しそうに頬を染めて私に報告をしてきた。 「あたしね、先輩と付き合うことになったんだ」  無邪気な笑顔でそう言われた時、すごく傷付いたのを覚えている。  親友なんだから「おめでとう」と言ってあげるべきだったのに、私にはそれができなかった。  彼女は私の好きな人が誰なのかを知らないから、それがいかに残酷な言葉なのか当然理解していないのだ。  わかっている、彼女も先輩も悪くない。一方的に片思いしていただけの私の出る幕じゃないのだと、何度も自分に言い聞かせた。  だけど私の中の汚い部分がそれを許さなかったのだ。  ずっと好きだった人を奪われた。  これはあの子の裏切りだ。  どうしてこんなことができるのだろう。  許せない、許せない。  いくつもの醜い言葉が、外に出ることもできないまま私の中で渦巻いていた。  それ以来、私の中でなにかが壊れてしまったのかも知れない。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加