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「最近元気ないな」
学校の帰り道、隣を歩いていた彼氏が私の顔を覗き込んできた。
「なんかあったのか?」
「ううん、なんでもない」
笑いながら答えたけれど、うまく誤魔化せなかったみたいだ。私はよっぽど暗い顔をしていたらしく、彼は心配そうに眉をひそめている。
この人と付き合い出したのは親友と先輩が交際してからすぐのことだった。私が失恋して間もなく、同じクラスの彼に告白されたのだ。
迷いつつも彼の告白を受けてしまったけれど、正直言って私は自分のことをかなり卑怯な女の子だと思っている。彼の気持ちを利用して一緒にいるのだ、自分のずるさに嫌気がさす。
なのに彼はこんな汚い私の心に踏み込んでくることもなく、優しく笑ってくれるのだ。
「なにかあったら相談に乗るからさ、あんま無理すんなよ」
彼は私がまだ失恋の傷を引きずっていることを知っている。それでもなにも言わずに立ち直るのを待ってくれているのだから、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
いつかこの胸の痛みを忘れて、彼と新しい未来を歩いて行けるだろうか。
「そこのあなた」
「え?」
どこからか声を掛けられた。
足を止めてきょろきょろと辺りを見ると、人通りの少ない道の端っこに露店を構えた占い師さんの姿があった。
黒いローブを目深に被っていて顔がわからない。地面に色の暗い絨毯を敷いて、その上の机には水晶玉やカードや、いかにもそれらしい道具が並べてある。
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