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「あの薬は!」
ほとんど掴みかかるような勢いで尋ねると、相手はくすくすしながら答えた。
「ああ、あれね。実はあなたが行ってしまった後、すぐに売れてしまってね」
「そんな」
頭が真っ白になるのを感じる。足元から崩れ落ちそうになりながらも、占い師さんに詰め寄った。
「誰が買って行ったんですか! 私、あれがないと!」
今すぐ取り返さなくてはと、それだけで頭がいっぱいになる。けれど占い師さんは楽し気な様子で、懐からあの瓶を取り出したのだ。
「運が良かったね。これが最後の一つさ」
「それをください! いくらですか?」
「差し上げましょう」
占い師さんは私の手の中に瓶をぎゅっと握らせた。
「いいんですか?」
「ええ、あなたの行く末が見られればそれで十分だもの。ただし取り扱いには気を付けてね。ちゃんと、願いを込めながら蓋を開けるんだよ」
私は手の中の瓶を見下ろす。
近くで見ると蓋にも細やかな模様が施されているのがわかった。瓶の中の液体は心なしかきらきら輝いているようにも見える。
私はこれをあの子にかけるところを想像した。あの子の綺麗な顔が、どろどろに溶けていくところを。
「ふふ、幸運を祈っているよ」
顔を上げた時、占い師さんの姿はどこにもなくなっていた。
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