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だが日付が変わる寸前、事態は急転する。
すべての怒りを吹き飛ばすほど驚くべきニュースが、長崎県の佐世保から飛び込んできたのだ。
「松戸翔を首謀者とするテロリスト集団が身体の自由を奪われ、拘束された状態で黒い船に載せられて漂着しました。警察は一味を即時逮捕」
拘束に使われた黒い物質は、黒い壁と同じ構成物質で作られていたという。
テレビ局のレポーターは、黒い巨人の仕業ではないか、と憶測をくり返した。
「主犯の松戸は手足を黒いセメントのようなもので固められ、罠にかかった動物のようにもがいているところを甲板で発見、逮捕されたとのことです。警察は犯人の自首を認めない方針です」
政府は米国に対し、松戸の逮捕によって事態が終結した旨を報告。
攻撃の取り止めを要求したが、即時に拒否された。
日本を除く国連加盟国、とくに米国や周辺の国々にすれば、東洋人のテロリストのことはどうでも良かった。
「黒い巨人」がこの地上に存在していることが、彼らにとっての脅威なのだ。
単体で一国の軍隊に匹敵する力を持つロボットに、他国の軍事システムに易々と侵入して核弾頭の起爆装置を解除するほどの人工知能を搭載した、驚異の兵器を放置することはできない。
国連の安保理も同じ結論を出した。
自らの意思を持ち、製作者でさえも制御が不能だと明らかになった時点で、黒い巨人は地上に存在してはならない危険なロボット兵器と認定された。
「巨人を塵ひと粒も残さず消滅させるまで、国連軍が攻撃を止めることはない」
梨花のつぶやきに、小太郎はうなずいた。
たとえ放射能により大気が汚染され、拡散する塵によって地球全体が寒冷化しようとも、世界から巨人の存在が消えるまで攻撃は続けられるだろう。
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