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1年7組 松井 俊
バシン、バシンと強烈な音がリズミカルに体育館から聞こえてくる。慣れないローファーと制服のせいで、歩くことさえ何故かぎこちなくなる。
「松井くん、今練習してるのがバレー部であってるのかな」同じクラスの、まだ名前も覚えてない子がそう言う。
「わかんないけど、多分合ってるんじゃないかな、聞いてみるね」
誰かに声を掛けようと様子を伺っていると、誰かのスパイクがちょうど僕たちのところに、ちょうど入り口に転がってきた。
「ごめんね、君たち新入生? 」
ショートカットで、まさにスポーツマンみたいな爽やかな先輩が話しかけてきた。筋肉もあって、がたいもある。
この人を見た時、初めて高校に来たって感じがした。高校生って、こんな感じだよな。
「あ、はい。ここのバレー部が強いって噂で聞いて、僕バレー未経験なんですけど」
「オッケー、大丈夫。僕もバレー未経験だったから。そんなことよりバレーが好きだって気持ちの方が大事だよ」
その先輩はそう言うと、手のひらを練習着で拭って、僕に手を差し出してきた。
「僕は3年の橋本、一応キャプテンをやらせてもらってる」君の名前は?とその人は言った。
「僕の、僕の名前は、松井俊です」
そのかっこいい先輩と握手した時、僕は絶対にバレー部に入ろうって思ったんだ。
この時は思わなかった。このバレー部がこんなにも暑苦しくて、騒がしくて、最高の場所だったなんて。
僕たち高校バレーボール部の物語が始まる。
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