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1年4組 橋本康二 初夏
キュッキュッって、シューズが床とこすれる音がする。
向こう側のコートにいる女子バスケット部のかけ声と、俺たちのコートから聞こえる女子とは違う男子特有のまとまりのない声が混ざっていて、なんだかこの空間がすごくかけがえのないもののように感じる。
バレーボールを始めたのは今年の春から、胸いっぱいにワクワクを詰め込んで門を叩いたこの部活は、今ではとっても居心地がいい。
「次、ハシモトっ、行くぞ! 」
ネットの向こう側でボールを出す先輩が俺の名前を呼ぶ。咄嗟にハイ。そう返事をしてレシーブ体制に入る。
両腕をぴったりと体の前で合わせて、腰を低く、先輩たちに教えてもらったフォームは、頭ではできているのに、体が追いつかない。
バラバラなフォームでは簡単なボールも綺麗にあげることができなくて、監督からは声が飛んでくる。
僕が失敗したボールは何回もバウンドして、ちょうどボール一つ分空いた体育館の入り口に向かっていく。
そのボールを追いかけながら、ふと思う。
もし先輩だったら、憧れの4番を付けている山本先輩だったら、どんな風にボールを上げるんだろう。
頭の中で考えるけど、うまく想像できない。外は日で照らされてすごく暑いけど、爽やかな風が吹いている。
山本先輩が練習に来なくなってから、今日で一週間目だった。
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