0人が本棚に入れています
本棚に追加
それから私の恋は一歩も進むことなくただ時間だけが過ぎていった。
あと2.3ヶ月で冬休みを迎える私は、平気そうな顔とは裏腹にとても、とても焦っていた。
そんな私の心を映す鏡みたいに、空模様は最悪のザーザー振りだった。
教室の窓側で二人で話していると、みかんが意地悪そうな顔で言った。
「ヒビキって、最初はなんでもズバッと言いそうな顔してるのに、案外可愛いっていうか、そんな感じだよね」
そう言ってみかんにはよくからかわれる。
実際そうなのだ。たしかにみかんはふわふわしてそうだけど、好きな人が出来たら一直線にアピールできる。
そうやって今は国公立大学を目指すクラスの人と付き合っている。私にはどうやってその子と関係を作ったのかすら分からないけど、みかんには出来る。
「それで山本君と一回でも喋ったの? 」
私は首を横に振る。
「はーっ。ほんとに奥手なんだから。ヒビキはスタイルも顔もいいんだから話しかければすぐ仲良くなれるのに」
ちょっとムッとして何か言い返そうとしたら、みかんは続けて言った。
「でも私はヒビキのそういうところ、結構好きだよ。好きな人とのことすごく大事にしようとしたり、かっこいい感じなのに、見てるとすっごい可愛い顔するし、私が男子だったらほっとかない! 」
急に面と向かってそんなことを言われると思ってなかった私は顔と耳を真っ赤にして黙ってしまう。
私が固まったことをいいことにみかんは急に立ち上がった。
「じゃあ私が代わりに山本君に話してくるね! 」
そう言ってみかんはさっと山本の所に行ってしまった。
ドアの近くに座ってる山本は普段は難しそうな本を読んだり、友達と遊んだりしてる。
バレーをしてる時とは反対に結構大人しいのだ。
みかんが話しかけて、割とすぐ二人は打ち解けていく。
遠くてみかんと山本がどんな話をしているかは分からないけど、割と盛り上がってるみたいだった。
私は私の中にある嫉妬の炎に気づかないわけにはいかなかった。
みかんが私の為に話してくれてるのは分かってるけど、大好きなはずのみかんが山本と話しているのがなぜか嫌に感じる私がいて、また胸がきゅーっと締め付けられる。
今回のこの痛みは、ほんとに痛い。前渡り廊下で感じた、幸せもある痛みじゃなかった。
山本が私を好きになって欲しいという気持ちといっしょに、私以外の子と喋ったりして欲しくないと思うのは私がおかしいのかな。
もちろんそんなことみかんには言えないけど。
みかんが私のところに帰ってきて、今日山本が放課後暇らしいよって教えてくれた。
私は山本の世界に私が入れるのかもって、心のどこかで期待した。
最初のコメントを投稿しよう!