3年1組 曽根 輝 九秋

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「鏡よ鏡。世界で一番美しいのはだぁーれ? 」  女子のリーダー格の山田さんが演じるのは、悪役の女王様。最初は嫌がっていたけど、実際役を演じることになると彼女はとても楽しそうに演技した。  世界で一番美しい人は分からないけど、今世界で一番愛おしいのは、松原なのだよ。僕は鏡のように心の中で呟いた。  今僕たち3年1組は文化祭本番まであと一週間のところまで来ていた。  教室の窓側で現場監督をしているなのに話しかける。 「いちごオレいる? 」 「あっ、やっと来たんだ。もうあきらくんの担当する役までもうすぐだよ」  なのは俺のいちごオレを受け取っただけで飲みはせず、びっしりと注意書きが書き込まれた台本をにらんでいた。 「ここまで大変だったな。脚本に配役、衣装は買いに行って、なかったら手作りだもんな」 「えー、私は結構楽しかったけどな。こういうのなんか生徒会みたいだし、やってよかったかも、実行委員会」  教室の隅で俺となのがそうやって話すことは、このクラスの日常になっていた。 「ほんとのこと言うと最初は不安だったんだ」  教室の真ん中の方で、女王と召使役が台本を片手に劇を演じている。 「先生の言う通りに、最高の文化祭にしたかった。でも私自分に自信なくてさ、失敗しなさそうで簡単な出し物にしようと思ってた」  なのは僕の方をチラッと見て言った。 「ありがとね。あきらくんがいなかったらこんなに上手くいかなかったと思うの」  そう言うと耳を少し赤くして教室で行われている劇の練習から目を離さなくなった。 「僕なんか何の役にも立ってないよ。実務をこなしてるのはなのだし、実際現場監督もなのがやってる」 「あきらくんは不器用だからね」  なのは前に向ける視線を変えはしない。  この劇に熱意をこめるなのの横顔を一番近くで見れると喜べばいいのか。それとも一番近くにいるのに他の全てよりも僕は見られないことを悲しむべきなのか。僕にはわからなかった。 「最高の文化祭にしような」 「もちろん」なのはそう言った。 文化祭当日まで、僕となのの接点が切れるまで、あと7日。
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