0人が本棚に入れています
本棚に追加
もし俺たちのチームが勝つ望みがあるとしたら、次のこっちのサーブで連続得点を狙うしかない。
もしこれ以上ずるずる点を取って取られてを繰り返してしまうと、点差がある以上俺たちの負けだ。
だから次のサーブ、俺のサーブでは何時もの入れるためのサーブではなくて、今まで練習してきたスパイクサーブでもいいかもしれない。打つべきなのかもしれないと思う。
タイムアウトが終わり、コートに戻ろうとする時、橋本に声をかけられた。
「あの、先輩。次僕たちが点を取ったらサーブは山本先輩ですよね。いつものサーブでもいいと思うんですけど、スパイクサーブでもいいと思います。僕はそう思います」
それだけ言い残し橋本は控えベンチに戻っていった。
いつから橋本は俺が練習の後一人でスパイクサーブを練習しているのを知っていたんだろう。そんなことは気にもならなかった。
最初はあんなに頼りなかった橋本が、こんなにも大きく育っている。
いつのまにか俺たちを支えてくれる強い柱になっている。
次のキャプテンは橋本だな、いつからかそう思っていた。
セッターに大声でボールを呼び、全身を使って助走に入る。
助走のイメージは、鳥のように、誰にも邪魔されず天高く飛び上がるような感じ。
体を引きしぼる力でボールをしばくと、スパイクは大きな破裂音とともに相手コートに突き刺さった。
歓声とともにチームメイトが駆け寄ってくる。
みんなにハイタッチしてからサーブ体制に入る。
21-23。ここでいいサーブを入れられればグッと勝利が見えてくる。
ジャンプサーブ、スパイクのように相手コートにぶち込むことからスパイクサーブと呼ばれることもある。このサーブは入った時の決定率も一番だし、外れる確率も一番高い。
チームメイトはもちろん、ベンチにいるヒビキも、橋本も喉が枯れそうなくらい応援してくれている。
ボールを一回転させてから、地面に軽く二回バウンドさせる。これが俺のルーティーンだ。
緊張はなかった。あるのは感謝と、そこからくる安心感だけだった。
こんなにも俺たちのために応援してくれている人がいる、誰よりも練習をしてきた。それなのに、ボールをネットの上に落とした時、本当にどっちに落ちるのかはわからないのか??
そんなはずはない。何回やったって俺たちが勝つに決まってる。
俺はボールを高く放り投げ、スパイクサーブの助走に入った。
この試合、勝つのは俺たちだ。
宙に浮くボールを狙いすまして、腕を振り抜いた。
最初のコメントを投稿しよう!