1年4組 橋本康二 初夏

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ちらっと時計を見ると、二つの針が6時50分を示している。バレー部は7時に終わるから、大体ここから最後のスパイク練習が始まる。 それぞれが自分のポジションにつくなかで、チームのエースポジションのレフトに入る一年生は僕だけだ。 確かに僕は一年生の中でもへたっぴだし、背もそこまで大きくない。でも一度あの姿を見てしまったら、もう止まれない。戻ることができない。目指さない僕を許すことができない。 相手ブロックが三人も付いているのにもかかわらず、堂々と打ち切ってチームに点をもぎ取るあの姿。 コンパクトなフォーム、止まっているように見える空中姿勢、何もかもがかっこよくて、僕にはなれそうになかった。 そんな山本先輩のガッツポーズの端に、映ってしまったのだ。エースを見つめる一人の女の子を、僕の好きな水樹先輩の姿を。 一本、二本、打つたびに自分の下手さを思い知らされる。山本先輩は自分とどう違うんだ。なんで僕じゃダメなんだ。溢れる気持ちをボールにぶつけるために、必死に飛ぶ。 バレーはスパイクだけでもいろんな種類があって、レフトは色んなタイミングのスパイクを打ち分けなければいけない。速攻、ボテボテになる。オープンの高いトス、なんとかミートする。 自分がまともに打てたことが嬉しくて、右手を腰のとなりでガッツポーズさせる。 それからのスパイクも、なんだかいつもがウソみたいに順調に決まっていく。徐々に視線が僕に集まるのを感じながら、僕の頭にはあの人のことしかなかった。
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