2年2組 神谷響子 立冬

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 響く子と書いて響子。友だちはみんなヒビキって呼ぶ。私もヒビキって呼ばれる方が好き。キョウコだとちょっと古臭い感じがするからちょっと嫌。  今は3時間目の体育で、持久走の時間だ。  女子は2キロで男子は3キロ走ることになってるけど、男子ってほんとに凄い。  あんまり喋らないから、遠目に見るだけだけど、高校二年の今でもすごく子供っぽくて、元気一杯だ。  だから男子にとっての3キロは私たちにとっての2キロなんかよりももっと簡単なものなのかな、とか思う。  私はバスケ部だから早く終わってみんなが走ってるのを座って見てる。  持久走って、運動神経がいいだけじゃ速く走れない、 毎日コツコツと走ってきた人だけがいい結果を出せる。  私は持久走のそういうとこがちょっと好きだったりする。  みんなはキライらしいからあんまり言わないけど。  男子も女子も、先頭を走るのは大体が運動部。その中でも走ったりしてスタミナがある野球部とかサッカー部、陸上部が強い。  去年のトップは陸上の倉本がぶっちぎりだった。  今回も倉本がトップなんだろうな。友達も良く廊下で倉本を見てはキャーキャー言ってる。  ぼーっと見てると、一人必死に倉本に置いてかれないようにくっついて走る奴に気づいた。  体力の限界が近いのか、顔は下を向きかけてるけど、根性で手と足を振っているように見える。  こんなにも必死に食いついているのに、二人の差は回を追うごとに大きくなっていく。  後ろを必死に着いていく奴のことは、見たことがなかったから誰か分からなかったけど、知らないやつなのにその姿を視界から離せない。  ゴール近くに陣取っている私の近くには友達がたくさんいるけど、誰一人としてそいつに気づいてないみたいだった。  こんなにも輝いているのにも関わらず。  それでもやっぱり倉本がトップなのかな、そう思ってたのに、ラスト一周に入った時、後ろにいた奴が負けるのがなぜか、どうしようもなく悔しくて声を漏らしてしまった。 「諦めちゃうの? こんなに頑張ったのに、もう少しで勝てるかもしれないのに」  その声が聞こえたのか聞こえてないのか知らないけど、そいつは急にばかみたいに腕を振って走り始めた。  倉本との差をぐんぐんと詰めて、最後の最後で追い抜かした。 「山本くん、大丈夫!? 」  そのまま転がって倒れたそいつの名前が山本ってことを、周りから駆け寄る女子バレー部の水樹の心配そうな声で知った。
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