番外編 小説家さんと赤いギター

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「これは?」  そう訊きながら渡されたギターを持つと彼が数歩離れてこちらをじっと眺めるとうん。と頷く。 「やっぱフミさんはストラトだね」 「すとらと?」 「自分が弾くならレスポールなんだけど、フミさんはぽくないから」 「ぽくない?」 「じゃあ、自分用の消耗品買ってくるからフミさんは本当にそれでいいのかギターと相談してて」 「あぁ、はい」  返事をすると大河さんは慣れた様子で違う棚へと向かってしまい、私はギターと共に取り残される。  相談しててと、言われてもなぁ。  突然ひとりにされたせいで落ち着かない気持ちになり左右を見回してから手元のギターに視線を向ける。  大河さんが普段使っているギターと似たような色合いだけれど。値段は、まぁ、さっき数字が六つ並んでいたものの半分くらいかぁ。  周囲を見回すと小さなベンチが置いてあるのが目に入り、そこに座って大河さんが戻ってくるのを待つことにする。  彼と出会って、あと少しで半年かぁ。  まさか出会ったときはそれで自分がここまで変わると思わなかったし、ギターを弾くことになるとは思ってもいなかった。  自分が彼のおかげでいい方向に変われたように、私も彼にいい影響を与えられていたらいいのだけれど。 「フミさん」  感慨深い気持ちでギターを眺めていると名前を呼ばれ、顔を上げるとそこにはうれしそうにネコミミカチューシャを持ってくる大河さんの姿があった。 最終話前編につづく https://estar.jp/_novel_view?w=25365279
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