番外編 小説家さんと赤いギター

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「ちゃんと、左利き用あるから」 「左利き用」  その言葉にようやく自分がここに連れてこられた理由に気付く。 「もしかして、私のギターを選びに来たんですか?」 「うん」 「確かに、いつまでも大河さんに借りる訳にもいきませんし。自分では何を基準に選べばいいのか分からないので大河さんに買うものを決めてもらったほうがいいですね」  自分のギターを持つなら管理の仕方も教わらないとなぁと思いながらそう話すと彼は左利き用と書かれた値札が並んでいる棚の前で立ち止まる。 「これ持ってみて」 「あぁ、はい」  何も考えずにそれを受け取ると 「左利き用だから、逆」  と持ち方を直される。 「違う」  見た目は右利き用とさほど違わないんだなぁと思っていると彼がまたギターを棚に戻す。 「さっきから言っているその違うって、何が違うなんですか?」 「フミさんが持ったときに、しっくりこない」 「似合っているか、どうかという意味ですか?」 「それも大事。教える側はギターとフミさんを一緒に見るから」 「見た目も大事なのは分かりますけれど」  何か違和感がある気がするのはなぜだろう。悩んでいると次のギターを渡される。 「そういえばギターの値段ってどれくらいするものなんでしょう?」  安いものでは無いだろう。ということは分かるけれど、と思いながら彼がとったギターの値札に視線を向けると、  一、十、百、千、万、十万、と数字が六つも並んでいた。 「た、大河さん、もっとお手ごろ価格の初心者向けのものは無いんでしょうか?」 「でも、大事に使えば一生使えるよ?」 「そうかもしれませんが」 「それに、プレゼントする」 「プレゼント?」 「そう」 「いや、いやいやいやいや」  慌てて持っていたギターを棚に戻して彼と向かい合う。
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